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1票の格差とは:これまでの問題点や最高裁による違憲判決の推移、解決策を解説

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一票の格差問題は、日本の選挙における投票価値の不平等に関する問題であり、特に衆議院や参議院選挙での選挙区ごとの有権者数の違いによって生じます。

ここでは、問題の背景や歴史、そして最高裁判所の判決を詳しく解説します。

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1票の格差とは

一票の格差は、同じ国会議員を選ぶ選挙で、人口の多い選挙区の有権者の一票が、人口の少ない選挙区の一票に比べて価値が小さくなることを指します。

例えば、人口の多い都市部の有権者が1人の議員を選ぶために数十万人の票が必要な一方、人口の少ない地域では数万人の票で議員を選ぶことができる場合、その「一票」の価値が違うことになります。

1票の格差の具体例

1票の格差とは、たとえば以下のようなケースです。

  • A選挙区:有権者数が50万人
  • B選挙区:有権者数が10万人

この場合、どちらの選挙区でも同じ「1人」の議員を選出するならば、A選挙区の一票の価値はB選挙区の一票の5分の1となります。

つまり、A選挙区の有権者の一票はB選挙区の有権者の一票よりもはるかに「軽く」なってしまうのです。これが一票の格差の問題です。

一票の格差を巡る最高裁の判決

衆議院選挙や参議院選挙が行われるたびに、一票の格差の合憲・違憲(状態)の判決が繰り返されてきました。その判決と国会の対応を振り返ります(経済同友会「過去の選挙無効訴訟最高裁判決」より)。

1976年:衆議院選挙区定数不均衡訴訟

1972年の衆議院総選挙における一票の格差が初めて問題となり、最高裁判所に提訴されました。格差は約5倍に達しており、訴訟で争われました。

1976年、最高裁はこの選挙に関して、初めて「違憲状態」であると判断しました。しかし、選挙結果自体は有効とされ、再選挙は行われませんでした。

この「違憲状態」という判断は、「憲法違反だが、すぐに選挙結果を無効にするほどではない」という判断です。この時点で、国会に選挙区の是正を促しました。

1985年:衆議院定数是正訴訟

1983年の衆議院総選挙に関して、再び一票の格差が争点となりました。この時点で、最大格差は約4.4倍に縮小されていましたが、依然として差が大きいとされました。

最高裁はこの選挙も「違憲状態」であると判断しましたが、選挙結果は有効とされました。この判決を受け、国会は「1票の格差是正」に向けた取り組みをさらに進め、選挙区の再編や定数変更が行われるようになりました。

1990年代:衆議院は格差3倍超で違憲状態、参議院は格差6倍超で違憲状態

1990年代に争われた衆議院選挙の訴訟(1990年)では、衆議院選挙での格差3.18倍が「違憲状態」とされました。1993年以降(1993年、1996年、2000年、2003年、2005年まで)は格差が3倍未満の場合には「合憲」という判決が出されるようになりました。

これにより、衆議院選挙では「格差3倍未満であれば合憲である」と考えられるようになりました。

一方、同時期に争われた参議院選挙の訴訟(1992年)では、参議院選挙の格差6.59倍が「違憲状態」と判断されました。以降(1995年、1998年、2001年、2004年、2007年まで)は格差が6倍未満の場合には「合憲」という判決が出されるようになりました。

これにより、参議院選挙では「格差6倍未満であれば合憲である」と考えられるようになりました。

2009年:衆議院選挙の格差2.3倍は違憲状態

2009年の判決では、衆議院選挙の格差2.3倍が「違憲状態」とされました。格差が焦点となったというより、小選挙区の定数割り振り(最初に都道府県に1議席ずつ割り振る=1人別枠方式)が定数の人口比例配分をゆがめていると指摘され、速やかな区割り変更が宣告されました。

2010年:参議院選挙の格差5.0倍は違憲状態

2010年7月に行われた参議院選挙における格差5倍は「違憲状態」とされました。都道府県ごとの定数割り振りの見直しを含めて、立法側で是正に向けた行動をすべきとしました。

ただし、立法の是正ができる合理的期間内であるとして(是正には時間がかかるだろうから、ちょっと待とうよという判断)、選挙自体は有効としています。

2016年~2022年:参議院選挙の格差3倍は合憲

2016年の参議院選挙は格差3.08倍、2019年の参議院選挙は格差3.00倍、2022年の参議院選挙は格差3.03倍でした。これらすべてについて、最高裁は「合憲」と判断しました。

最高裁は「投票価値が著しい不平等状態だったとは言えない」と判断したうえで、「立法府には格差のさらなる是正を図り、再拡大させない取り組みが引き続き求められる」と強調しています。

さらに、「法改正の見通しが立たず具体的な検討が進展しているとも言い難い」と是正の遅れも指摘しています。

今後の判決内容にも影響してきそうです。

2016年以降:衆議院選挙のアダムズ方式導入が評価され合憲

2016年に国勢調査の結果をもとに小選挙区を再編成する「アダムズ方式」が導入されました。2014年は格差2.13倍で「違憲状態」とされましたが、アダムズ方式導入以降の2017年・2021年)では格差2倍前後で「合憲」とされています。

アダムズ方式の合理性を認め、今後の是正が期待できるという判断でした。

政府による1票の格差の是正措置

一票の格差を是正するために、政府や国会は選挙制度の改革を繰り返してきました。その主な対策には以下のものがあります。

選挙区の再編

選挙区ごとの議員数を調整し、人口の多い選挙区に多くの議席を割り当て、格差を小さくする試みが行われています。たとえば、人口が多い都市部では議席を増やし、過疎地域では議席を減らすという形です。

※関連記事:比例代表制と選挙区制の違いとは? 〜衆議院と参議院における選挙制度の併用を徹底解説〜

定数削減・定数増加

参議院や衆議院の定数を調整することで、格差の是正を試みています。たとえば、2015年の参議院選挙では、定数を変更し、選挙区の議員数を再編して一票の格差を縮小させる措置がとられました。

※関連記事:国会議員の人数(衆議院・参議院の定数):定数削減に関する議論やその必要性について解説します

合区

過疎地域の一票の重みを軽くすることを防ぐため、複数の県を統合して1つの選挙区とする「合区」が導入されました。これにより、人口が少ない地域でも、選挙区全体でのバランスを取ることが可能となります。ただし、地元の声が反映されにくくなるという問題もあります。

アダムズ方式導入

先述のように、2016年には衆議院選挙の小選挙区の区割りに「アダムズ方式」が導入されました。国勢調査の結果をもとにして、最新の人口動態で小選挙区の区割りを行う方式です。

1票の格差の現状と今後の課題

一票の格差問題は、日本の選挙制度における重要な課題の一つであり、特に都市部と地方部の人口格差が広がるにつれて問題は深刻化しています。

最高裁はこれまで、「違憲状態」とする判断を示しても選挙結果を無効とした例はありません。

今後の課題としては、以下の点が挙げられます。

人口減少や少子高齢化が進む中で、地方の代表性を確保しつつ、格差をどのように是正するか。また、都市部と地方の利益の調整が、ますます難しくなっているため、選挙区再編や議席配分のさらなる見直しが必要とされる可能性があります。

まとめ

一票の格差問題は、選挙における投票価値の不平等を巡るものであり、最高裁は過去の判決で「違憲状態」を繰り返し指摘してきました。国会は選挙区の再編や定数の調整、合区の導入などの対策を講じてきたものの、格差の完全な解消には至っておらず、今後も議論が続く課題です。

衆議院選挙や参議院選挙における1票の格差問題を説明しました。最高裁は衆議院選挙で格差2倍を違憲状態としていましたが、アダムズ方式導入後は2倍でも合憲としています。

また、参議院選挙では格差3倍を合憲としていますが、今後の是正が速やかに行われることを期待すると指摘しています。

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