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選挙権18歳:18歳以上に引き下げられた理由とその影響、被選挙権の年齢引き下げに関する議論をまとめました

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日本では長らく、選挙権は20歳以上、被選挙権は25歳以上でした。2016年から若者の政治参加促進や少年法改正に合わせて選挙権を18歳以上に引き下げられました。

では、年齢引き下げによってもともとの目的はどの程度果たせているのでしょうか。また、被選挙権の年齢は引き下げられていませんが、どのような議論が交わされているのかもまとめました。

※関連記事:政治家になるにはどうすればいいか【国会議員】:資格はいる?年齢制限は?お金はどれくらいかかる?

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選挙権はいつから18歳になったのか

1946年以降、日本では20歳以上の男女に選挙権が与えられてきました。その年齢が18歳以上に引き下げになったのは2016年からです(法改正は2015年で、施行は2016年から)。

選挙権が18歳に引き下げられた理由

選挙権が20歳以上から18歳以上へと引き下げられたのには理由があります。大きく2つ紹介します。

若者の投票率を上げるため

1つ目は、若者の投票率を上げるためです。

1993年以降、20代の投票率は50%未満を推移しています。ほかの世代がおおむね60~80%なのと比べると非常に低いです。

また、1990年代に20代だった人は2000年代には30代、2010年代には40代、2020年代には50代です。若いころにあまり投票に行かなかった世代なので、年を重ねても投票に行かない選択をする人が多いようです。2012年以降、投票率はずっと60%未満です。

そこで、18歳という若い年齢のうちに選挙に参加する機会をつくることになりました。

18歳といえばほとんどの人はまだ高校生ですが、近い将来社会に出る年齢です。選挙をとおして税法の改正や各種の立法・法改正に当事者として意思を表明することで、これからの日本社会の構築に参加する機会を設けるというのが狙いです(総務省より)。

※関連記事:選挙でネット投票ができないのはなぜか:ネット投票のメリット・デメリットや世界の動きとの比較を紹介

少年法改正のため

選挙権引き下げの2つ目の理由は、少年法改正のためと言われています。

以前の少年法は未成年の「更生」(教育のやり直し)に力点が置かれていました。そのため、重大犯罪にかかわっても、少年であるという理由で厳罰化を免れていた。

例えば放火や組織詐欺などを犯していても、故意の殺人事件でなければ少年院に送られて「更生」プログラムを受けていました。

ところが2022年の少年法改正で、18歳・19歳がそれらの重大犯罪を犯していれば大人と同様に処罰の対象になりました(NHK「少年法 何が変わった?」より)。

いきなり少年法を改正すると社会の風当たりが強いため、まず2016年に選挙権の年齢引き下げで私たちが「18歳=大人」という認識を新たに持つ時間をつくり、2022年に波風をあまり立てずに少年法改正という流れがつくられました。

国際的には選挙権18歳以上が当たり前

では18歳以上が選挙権を持つのは珍しいかというと、世界的に珍しくありません。むしろ、18歳以上で選挙権を得るのは一般的な傾向になってきています。

2010年前後の時点で、18歳までに選挙権が与えられている国や地域は以下のとおりだそうです(那須俊基『諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢』より)。

  • 世界199の国と地域のうち176の国と地域(約9割)
  • OECDは加盟国のほぼすべて
  • G8のすべての国

日本も18歳以上に選挙権が与えられるようになったのは、世界の動きをみればごく自然なことでした。

選挙権の年齢引き下げで投票率は上がったのか

では、年齢引き下げは、その目的のひとつである「投票率アップ」に影響したのでしょうか。

以下、衆議院選挙と参議院選挙の年代別投票率(%)です。

衆議院選挙10歳代20歳代30歳代40歳代50歳代60歳代70歳代以上全体
1993年 –47.4668.4674.4879.3483.3871.6167.26
1996年 –36.4257.4965.4670.6177.2566.8859.65
2000年 –38.3556.8268.1371.9879.2369.2862.49
2003年 –35.6250.7264.7270.0177.8967.7859.86
2005年 –46.2056.7971.9477.8683.0869.4867.51
2009年 –49.4563.8772.6379.6984.1571.0669.28
2012年 –37.8950.1059.3868.0274.9363.3059.32
2014年 –32.5842.0949.9860.0768.2859.4652.66
2017年40.4933.8544.7553.5263.3272.0460.9453.68
2021年43.2336.5047.1355.5662.9671.3861.9055.93
総務省・国政選挙の年代別投票率の推移についてより
参議院選挙10歳代20歳代30歳代40歳代50歳代60歳代70歳代以上全体
1995年 –25.1541.4348.3254.7264.8657.2044.52
1998年 –35.8155.2064.4469.0075.2465.2258.84
2001年 –34.3549.6861.6367.3075.0565.2456.44
2004年 –34.3347.3660.2866.5474.2163.5356.57
2007年 –36.0349.0560.6869.3576.1564.7958.64
2010年 –36.1748.7958.8067.8175.9364.1757.92
2013年 –33.3743.7851.6661.7767.5658.5452.61
2016年46.7835.6044.2452.6463.2570.0760.9854.70
2019年32.2830.9638.7845.9955.4363.5856.3148.80
2022年35.4233.9944.850.7657.3365.6955.7252.05
総務省・参議院議員通常選挙における年代別投票率の推移より
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2016年以降の参議院選挙の投票率

選挙権が18歳以上に引き下げられて最初の国政選挙が2016年の参議院選挙でした。このとき、10歳代の投票率は46.78%で、全体投票率は54.70%でした。

「年齢引き下げ後、初の国政選挙」ということで注目を集めていましたが、結果は40%台。全体投票率を押し下げる結果になっています。

さらに2019年、2022年の参議院選挙では10歳代の投票率はそれぞれ32.28%35.42%でした。同じく20歳代は30.96%と33.99%だったので、年齢を引き下げても投票行動に結びついたとは言えなさそうです。

2017年以降の衆議院選挙の投票率

衆議院選挙ではどうだったのでしょうか。

年齢引き下げ後の初の衆議院選挙は2017年に行われました。全体投票率が53.68%で、10歳代の投票率は40.49%でした。つづいて2021年に行われた衆議院選挙では、10歳代の投票率が43.23%、全体投票率が55.93%でした。

参議院選挙の10歳代投票率が30%台だったのに比べれば「マシ」という結果です。

ただし、20歳代の投票率は参議院選挙と同じく30%台でした。

全体投票率も50%台なので、衆議院選挙でも年齢引き下げ効果は、投票率には表れていないようです。

20歳代になると投票率はガクンと落ちる

10歳代で投票権を得た人たちが20歳代になったとき、それ以前の20歳代と比べて投票率に変化はあったのでしょうか。

結論から申し上げると「なかった」ようです。

2016年、2017年に10歳代だった人は2019年、2021年、2022年の国政選挙時には「20歳代」になっています。この3回の国政選挙での20歳代の投票率は平均すると33%ほどでした。

年齢引き下げ前の国政選挙でも20歳代の投票率は32-33%でしたから、10歳代で投票権を得たところで、20歳以降での投票行動にも結び付いていないようです。

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選挙権引き下げによる少年犯罪への影響

選挙権引き下げの2つ目の目的は「少年法の改正」でした。少年犯罪の状況はどうなっているのでしょうか。

年次少年の刑法犯比率(%)
1966年    39.0
1967年    37.0
1968年    34.7
1969年    33.9
1970年    35.6
1971年    35.7
1972年    35.6
1973年    37.1
1974年    38.0
1975年    38.1
1976年    38.1
1977年    38.8
1978年    42.0
1979年    45.1
1980年    49.3
1981年    52.0
1982年    50.8
1983年    52.0
1984年    49.5
1985年    51.2
1986年    52.3
1987年    51.2
1988年    53.0
1989年    57.4
1990年    56.7
1991年    54.7
1992年    51.0
1993年    49.0
1994年    46.7
1995年    47.2
1996年    49.2
1997年    52.7
1998年    52.5
1999年    48.6
2000年    46.3
2001年    46.0
2002年    44.1
2003年    41.4
2004年    37.9
2005年    35.4
2006年    32.7
2007年    31.6
2008年    30.4
2009年    30.9
2010年    30.4
2011年    29.3
2012年    26.4
2013年    25.1
2014年    22.9
2015年    19.5
2016年    17.1
2017年    15.7
2018年    14.3
2019年        13.1
2020年        12.0
2021年        11.3
2022年        11.9
法務省「令和5年版 犯罪白書」より

少年犯罪は2000年前後から急激に減っている

グラフを見て分かるように、実は少年犯罪は2000年前後から急激に減少しています。

法務省「令和5年版 犯罪白書」より

かつては刑法犯の2人に1人が未成年でしたが、今では10人に1人です。

また、成年・未成年合わせた刑法犯罪自体も、2002年をピークに1/4未満にまで減少しています。

少年による重大犯罪も減っている

減っているのは件数だけではありません。未成年者による重大犯罪(殺人、強盗、放火など)も減っています。

そもそも少年法の改正は未成年者にも厳罰を与えられるようにするためでした。被害者や被害者家族の感情に配慮しての対応だったため、少年犯罪の発生自体への影響は非常に小さかったと思われます。

被選挙権の年齢引き下げに関する意見

これまでお伝えしたように、選挙権は18歳以上からです。では被選挙権は何歳からなのかというと、「25歳以上」です。

  • 衆議院と地方議会議員・市区町村長: 25 歳以上
  • 参議院と都道府県知事: 30 歳以上

被選挙権の年齢引き下げについて、「18歳以上に引き下げるべき」という意見と、「現状のままにすえおくべき」という意見があります。

それらの意見をまとめています。

被選挙権も18歳以上に引き下げるべき理由

被選挙権も18歳以上に引き下げるべきと考える人たちの根拠は以下のとおりです(日本総研などより)。

  • 欧米も18歳以上が主流だから、それに合わせよう
  • 選挙に参加できてはじめて若者が本当の意味で「政治参加」できるようになる
  • 「経験」より「可能性」を重視すべき

もともと、被選挙権を25歳以上としたのは明治時代の欧米の「当たり前」にならったからでした。欧米の「当たり前」はその後変化し、現在ではOECD加盟国の半数以上が被選挙権と選挙権の「両方」を18歳以上としています。

時代に変化に合わせ、「今」の若者の意見を政治に活かすためにも、被選挙権を選挙権と同じ18歳に統一するほうが良いとの意見です。

被選挙権を25歳以上のままにすべき理由

一方、被選挙権を現状のままにすべきとする意見の根拠は以下のとおりです。

  • 社会経験が乏しく、良識のある判断がむずかしい
  • 被選挙権の年齢を引き下げても若者の政治参加が増えるとは限らない

そもそも選挙権と被選挙権で年齢に差異を設けているのは、政治家として活動するにあたって「経験」からくる「良識のある判断や行動」が求められているからです。

例えば衆議院議員には25歳以上から立候補できますが、解散制度のない参議院は30歳以上と年齢をさらに上げています。これは参議院議員に「より良識のある判断」を求めているからです。

このように、衆議院には国民の声を反映しやすくしていくつかの優越を認めつつ、参議院には国民の意見に迎合しすぎない判断ができるように年齢制限や解散なしといった制度が設けられています。

※関連記事:衆議院の優越とは:衆議院に強い権限がある理由や優越権限6つの内容を紹介

ただ年齢を引き下げれば良いというわけではなく、衆議院と参議院の在り方自体も見直すような大きな議論の必要性がありそうです。

2023年被選挙権のない20代8名が立候補して提訴

被選挙権の年齢引き下げがなされないことに対して、反発する動きも出ています。

2023年全国統一地方選挙において、25歳未満の若者8名が地方議員選や知事選に届け出をしました。必要書類をそろえ、供託金も納めましたが選挙管理委員会の判断は、当然ながら「立候補不受理」(政経百科など)。

被選挙権の年齢引き下げにかんして提訴しました。

※関連記事:立候補に必要な選挙の供託金について:金額はいくらなのか、投票数がどれくらいあれば返還されるのか

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まとめ

2016年に選挙権が18歳以上に引き下げられました。若者の政治参加を促すことと、少年法改正という2つの目的がありました。

ですが、2016年以降の国政選挙でも若者の投票率は上がっていません。この課題に関して、被選挙権の年齢引き下げを求める動きも活発化してきています。

国際的には選挙権も被選挙権も18歳以上が主流となってきています。今後、日本国内でも議論を活発に行うことで若者の政治参加が促され、結果的に多様な意見が政治に反映されることを期待しています。

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