国会議員や地方議員に支給される議員年金。いくら支給されるのか、なぜ必要とされていたのかをまとめました。
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議員年金とは

議員年金とは、国会議員や地方議員がもらえる(た)年金です。
国民年金とは別に支給されます。
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議員年金の始まりとその目的
議員年金制度は1958年に国会議員互助年金法の成立によって導入されました。国会議員が公務に専念しやすい環境を整えるための制度でした。
議員は任期が決まっているため、将来的な経済的安定が保証されていない職業です。そのため、退職後の生活保障を確保し、優秀な人材が政治に参加できるようにすることが重要視されました。
また、議員の地位の安定が、政策立案や国会運営の質向上につながると考えられていました。
在職期間10年以上で受給資格を得られる
国会議員なら全員がもらえるわけではなく、国会議員として10年以上(地方議員なら12年以上)在職し、掛け金を年間200万円以上支払うともらえるようになります(総務省より)。
10年経った時点ですぐ支給されるわけではなく、65歳になって最初の4月1日から支給されます。
議員年金の金額
議員年金は在職年数が長くなるほど金額が大きくなります。在職10年で年間412万円が支給されます。
在職年数が1年伸びるごとに年間8.24万円ずつ増えます(参議院より)。
在職年数が15年になると年間453.2万円、
在職年数が20年になると年間494.4万円です。
上限は在職50年(=40年加算)で、年間741.6万円になります。
65歳以上の無職世帯が1年間に使う生活費は、平均300万円弱です(総務省統計局より)。支給最低額ですでに平均の1.4倍です。
国民年金との比較
私たち一般国民も保険料を支払って国民年金が支給されます。満額受給できる場合(保険料を480か月支払った場合)、年間816,000円(2024年時点)もらえます。
国民年金満額で議員年金の最低額の18%に過ぎません。
なぜ議員年金は廃止されたのか?

廃止決定時の内閣総理大臣とその判断
議員年金制度は2006年、小泉純一郎内閣の下で廃止されました。
小泉首相は「構造改革」を掲げ、無駄を排除する方針を進めていました。年金制度の状況悪化に加え、国会議員の経済的恩恵の大きさへの国民感情の悪化から、小泉首相が議員年金の廃止検討を指示。
指示が出された翌月には廃止に向けて方針が決定しました(衆議院「国会議員互助年金法を廃止する法律案経緯」より)。
廃止内容に関して与党案と民主党案が提出され、採決の結果、与党案で可決されています。
なお、地方議員の議員年金は2011年6月1日付けで廃止されています。
国民の不満と廃止への圧力

議員年金制度は、一般国民と比較して特別扱いされていると認識され、不公平感が批判の対象となりました。
特に、短期間の在職でも高額の年金が支給される仕組みは、多くの国民にとって「特権」と映りました。
世論調査では反対意見が多数を占め、新聞やテレビでも批判的な報道が続きました。また、抗議活動や陳情が相次ぎ、議員年金制度は社会的に「存続不可能」と見なされるようになったのです。
議員年金廃止後の影響
廃止による政治家への影響
議員年金廃止により、退職後の生活設計に困難を抱える元議員が増えました。一部では、議員を引退した後の生活費を補填するために新たな職を探す例が見られ、公職を経験した人材が適切に活用されない状況も指摘されています。
また、若手や中堅議員が経済的リスクを避けるため政治から離れることも懸念されています。結果として、優秀な人材が議員職を敬遠する可能性が議論されています。
廃止前に受給資格を満たした議員には年金が支給される
議員年金は2006年4月1日付けで廃止されましたが、制度が完全になくなったわけではありません。あくまで、「新たな加入」が停止されただけです。
廃止以前に掛け金を支払っていた議員には、掛け金の金額に応じて減額された年金が支払われます(衆議院「国会議員互助年金法を廃止する法律」より)。
議員年金復活の議論が起こる
一度廃止された議員年金ですが、廃止後も「制度復活」の動きがたびたび発生しています。
特に2017-2018年にかけて議員年金復活の動きが本格化し、各所で反対意見が飛び交っていました(日本経済新聞など)。
国民や財政へのメリットと課題
議員年金廃止は財政負担を軽減する一助となりましたが、その効果は一時的で、国全体の財政問題解決には至りませんでした。
一方で、廃止による議員の待遇低下が、公職の魅力を損なう可能性も懸念されています。特に、議員の質や能力に影響を与える点については、賛否が分かれるところです。
廃止後も立候補者数は変わらない

2006年に年金廃止決定後、選挙の立候補者数は特に変わっていません。
衆議院選挙の実施年 | 立候補者数 |
2003年 | 1059人 |
2005年 | 1131人 |
【2006年議員年金廃止】 | |
2009年 | 1374人 |
2012年 | 1504人 |
2014年 | 1191人 |
2017年 | 1180人 |
2021年 | 1051人 |
2024年 | 1344人 |
議員年金廃止後の衆議院選挙ではむしろ立候補者数は急増しています。2014年以降はやや減少していましたが、2024年の衆議院選挙で再び1300人以上に戻っています。議員年金廃止前と変わらないか、むしろ増えています。
議員は辞職後も自己責任が求められる
議員候補者への後押しとして必要視されていた議員年金。廃止後、議員は辞職後の生活設計を自身で行わないといけなくなりました。
特別扱いが許される時代ではなくなっており、議員経験者も辞職後に自己責任が求められるようになっています。
議員年金は本当に必要だったのか?
議員退職後の生活苦に対処するため
国会議員を務めた後に経済的に困窮する人が少なくないと言われています。一般企業に就職しようにも、企業側が「元政治家」の肩書に違和感を覚えて採用を見送ることもあります。
あるいは、政治家の職務経験をどのように評価すれば良いか企業側分からないという問題もあります(上山信一「政治家を辞めたら何をする?--若手の元議員・首長の”社会復帰”を助けよう」より)。
選挙費用が高額
そもそも、国会議員になるのに相当な金額を費やしています。
国政選挙で1回3000万円以上とも言われており、選挙後も販促活動で多額の出費が必要です。
※関連記事:政治家になるにはどうすればいいか【国会議員】:資格はいる?年齢制限は?お金はどれくらいかかる?
議員候補者のすそ野を広げるために必要とされる
これだけの費用を捻出するには経済的相当裕福な人か、大口の支援者を抱えている人でないと政治家を目指すのはむずかしく感じます。そうなると、特定の人たちだけが政治家になるので多様な意見を政治に反映させにくくなります。
議員をやめた後の生活の心配を和らげて、議員を目指す候補者のすそ野を広げるために議員年金が必要と主張されています(朝日新聞2016年8月23日付け)。
議員年金の存在意義とその議論
議員年金は、議員が安定した生活を送りながら国政に専念できるようにするための制度でした。しかし、一般国民の経済的負担との兼ね合いが十分に議論されていなかった点が問題視されました。
一部では、議員の地位を保つためには必要であったという意見も残っています。
国民と議員年金:その関係性と教訓

国民の感情が政治を動かした事例としての議員年金廃止
議員年金廃止は、国民の声(世論)が政治に直接的な影響を与えた好例です。不公平感や批判が高まる中で、議員自身が特権を放棄する決断を下しました。
この事例は、民主主義社会における国民と政治家の関係を象徴するものといえます。
なお、世論の影響力については以下の記事で詳しく解説しています。
世論とは何か?その役割や政策に与える影響力、形成されるプロセスと調査方法をくわしく解説
公平な年金制度を目指すために必要なこと
議員年金廃止の経験から、特定の集団が特権的な待遇を受ける制度への批判が学べます。これを踏まえ、公平で透明性のある年金制度を構築することが、国民の信頼を得るために重要です。
また、政治家自身の率先した姿勢が必要です。
議員年金に関するQ&A
Q1: 議員年金とは何ですか?
A: 議員年金は、国会議員が退職後に受け取る年金制度で、議員としての生活保障と公職の安定を目的として導入されました。
Q2: 議員年金が導入されたのはいつですか?
A: 1958年に導入されました。この制度の目的は、議員が退職後も安定した生活を送れるようにすることと、議員活動への専念を促すことでした。
Q3: 議員年金の財源はどうなっていましたか?
A: 財源は議員からの掛け金と国庫負担の2つで賄われていました。しかし、財政負担が大きく、持続可能性が問題視されました。
Q4: なぜ議員年金は廃止されたのですか?
A: 2006年、小泉純一郎内閣のもとで廃止されました。その理由は、財政負担の増大、不公平感に対する国民の批判、そして制度自体が持続不可能だったためです。
Q5: 議員年金廃止後、退職した議員はどうしていますか?
A: 廃止後、議員には一般の公的年金のみが適用されるようになりました。一部の退職議員には経済的な負担が増加したとの指摘もあります。
Q6: 議員年金が廃止されたことによる国民へのメリットは何ですか?
A: 国民にとっては、税金からの財政負担が軽減されるというメリットがありました。また、不公平感が軽減され、制度の透明性も向上しました。
Q7: 他国でも議員年金制度はありますか?
A: はい、国によって異なりますが、アメリカやヨーロッパの多くの国でも議員年金制度があります。ただし、日本の制度は特に国庫負担が多い点で特徴的でした。
くわしくは、以下のサイトで閲覧できます。
欧米主要国の国会議員年金制度-アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ-
Q8: 現代において議員年金復活の議論はありますか?
A: はい、一部では復活を求める声があります。主な理由は、退職議員の生活保障や公職の魅力を維持する必要性があるとされているからです。ただし、国民の反発も予想されます。
Q9: 国民感情は議員年金廃止にどのような影響を与えましたか?
A: 国民の不公平感や高額年金への批判が廃止の大きな要因となりました。世論調査や抗議活動などが政治家の判断に影響を与えたと言えます。
Q10: 公平な年金制度を実現するためには何が必要ですか?
A: 国民全体にとって納得できる透明性のある制度設計が必要です。また、議員と国民の間で責任を共有し、公平性を確保するための議論が求められます。
まとめ
議員年金は、議員の生活保障や公職の安定性を目的として導入されましたが、財政負担や国民感情の反発により廃止されました。
廃止後、退職議員の生活や公職の魅力への影響が懸念される一方、財政負担軽減などのメリットもありました。また、議員年金制度は日本特有の特徴を持ち、他国の事例と比較することでその特異性が浮き彫りになります。
現代では復活を求める声もありますが、公平性を重視した議論が求められます。このテーマを通じて、国民と政治の関係性や透明性ある制度設計の重要性を考えることができます。
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