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政党交付金とは:政党交付金の仕組みと、不正利用があるのに制度が存続する理由

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記者会見で苦悩の表情をうかべる政治家 政治活動
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「政党交付金って何?何に使うお金?」

ニュースでときどき耳目に触れる政党交付金ですが、それが一体なのか、何に使っているお金なのか分かりにくいですよね。

ですが、私たちの生活にかかわる国政で使われているお金です。定期的に不正利用のニュースも流れますが、交付金がなくなることはありません。

政党交付金とは何か、なぜなくならないのかを知っておくほうが、今後の有権者としての意識や行動にも関係してきます。

そこで、政党交付金(政党助成制度)についてまとめて説明します。

※関連記事:政党内閣とは:日本で最初の政党内閣はどの総理大臣のときで、その後どうなったか

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政党交付金とは

政党交付金とは、政党の活動を助けるために国庫から支出されるお金のことです。税金から各政党に支払われます。

国勢調査の結果をもとに、「250円×人口」の金額が毎年1月1日時点での各政党の議員数、選挙での得票率に応じて年4回(4月、7月、10月、12月)に分けて分配されます。

ちなみに2024年度の政党交付金は315億円でした(NHK政治ニュースより)。

※関連記事:議員立法とは:議員立法の手続きや特徴、成立する議員立法が少ない理由を解説

政党助成制度に基づいて支払われる

政党交付金とは、政党助成制度に基づいて支払われます。

政党助成制度は以下のように規定されています。

政党助成制度は、国が政党に対し政党交付金による助成を行うことにより、政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とした制度です。

総務省HPより引用

つまり、政治活動を資金面で支援する制度です。これがないと、政治活動を行えるのがお金に余裕のある人ばかりになってしまい、政治への国民の声の反映が偏る恐れがあります。

大学の奨学金のようなものですね。

政党に対して交付される

政党交付金はその名のとおり、政党に対して支払われます。政治家個人には政党本部から分配されます。

2024年度の政党交付金はNHKの試算では以下のとおりです。

政党交付金額
自民党160億5300万円
立憲民主党68億3500万円
日本維新の会33億9400万円
公明党29億800万円
国民民主党11億1900万円
れいわ新選組6億2900万円
社民党2億8800万円
参政党1億8900万円
教育無償化を実現する会1億1800万円
NHK政治ニュースより

なお、共産党は制度の目的に反対しており、毎年政党交付金を申請していません。

政党交付金の交付条件

政党交付金が分配されるには一定の条件があります。国政政党であり、以下の2つの要件のいずれか1つを満たしている必要があります。

  • 国会議員が5人以上
  • 直近の国政選挙での得票が全国の有効投票総数の2%以上(参議院選挙は前回、前々回いずれかで良い)

余った政党交付金は返還する

政党交付金は経費のように後払いではなく、事前の分配です。ですので、余るときもあります。

余った政党交付金は国庫に返還義務があります。返還された例は少ないですが、以下のような例があります。

  • 2014年解党したみんなの党が残金約8億円を返還
  • 2015年解党した維新の党が残金約2億円を返還
  • 2017年民進党から立憲民主党へ政党変えした蓮舫氏が残金約3000万円を返還
  • 2021年れいわ新選組が残金1483円を返還

政党助成金との違い

ニュースなどでは、政党交付金、政党助成金という2種類の呼び方がされることがあります。前述の要因、政党助成制度に基づいて支払われるお金を政党交付金と呼ぶので、正確には「政党助成金」は存在しません。

とはいえ、習慣的に政党助成金と言われることもあります。「政党助成金=政党交付金」です。

政党交付金の問題点

政党交付金にはいくつか問題点も指摘されています。

政党交付金の不正利用

まず、政党交付金には使い道に制限がありません。

政党は、政党交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに特に留意し、その責任を自覚し、その組織及び運営については民主的かつ公正なものとするとともに、国民の信頼にもとることのないように、政党交付金を適切に使用しなければならないとされています。

総務省HPより引用

上記のように「適切に使用」とあるだけで、「適切」の範囲規定はありません。

ただし公開義務があります。過去には不適切な使用と指摘された例も多数ありました。

2007年玉澤徳一郎氏、領収改ざん

自民党で防衛庁長官や農林水産大臣を歴任した玉澤徳一郎氏にかんして、2004年分の領収書の領収書を偽造して重複計上していたことが2007年に発覚しました。

2007年に自民党を離れ、2008年に復党し、2009年に政界を引退しています。

2010年中島正純氏、架空支出計上

2009年に民主党から立候補して初当選した中島正純氏に関して、政治資金収支報告書に架空計上が指摘されました。

2009年に知人から車やPCをリースしたとして費用が計上されていましたがその事実はなく、2010年に民主党を離党しています。

2016年民進党富山県連、飲食や選挙費用に不正利用

2016年、民進党の富山県連本部で政党交付金の不正利用が発覚しました。

2010年から2015年までの6年間、坂野裕一氏と高田一郎氏が飲食費や架空の広報費・印刷費を計上していました。

2名とも除籍のうえ、政界を引退しています。

2022年日本維新の会トップの馬場氏に収支報告書虚偽記載の疑い

2022年、日本維新の会党首の馬場議員に、収支報告書虚偽記載の疑いが指摘されました。

2018年分、2019年分の収支報告書の金額が収支報告書と使途報告書それぞれに記載された金額にズレがありました。

※関連記事:政治資金収支報告書とは:収支報告の報告義務はどこまで?違反するとどうなる?

2024年杉田水脈氏、政治資金収支報告書記載もれ問題

自民党の杉田水脈氏が、2018年から2022年の間に政治資金パーティによるキックバックを1500万円以上得ていたにも収支報告書に記載していなかったとして刑事告訴されました。

ほかにも会合費の領収書がスナックや居酒屋、バーのものが多く、本当に政治活動による支出なのか疑問視されました。

問題発覚後、自民党から半年間の役職停止処分も受けています。

政党交付金目当てに駆け込み政党ができる

政党交付金発生には、「国会議員が5名以上」あるいは「前回の国政選挙で2%以上の得票率」という要件が必要です。これを狙って年末・年始に政党の離合集散をくりかえして「政党交付金をもらえる政党」を誕生させる可能性があります。

2014年生活の党

2014年12月、所属議員数が4名に減って政党交付金をもらえなくなる「生活の党」に山本太郎参議院議員が参加して議員数をギリギリ5名にするという事態が発生しました。

2015年日本を元気にする会、太陽の党

2015年1月、解党した「みんなの党」の元所属議員4名と「次世代の党」に所属していたアントニオ猪木参議院議員が強力して5名で「日本を元気にする会」が結成。政党交付金を獲得しました。

さらに同年・同月、「次世代の党」に所属していた園田衆議院議員が「太陽の党」に政党変えし、このおかげで太陽の党は政党助成金を獲得できました。

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なぜ政党交付金が生まれたのか

前述のように、政党交付金の利用や収支報告に関して、不正利用が疑われるケースがたびたび発生しています。それにも関わらず、政党交付金が生まれて現在もなくならないのには理由があります。

政治家の汚職を減らすため

政党交付金が生まれた最大の理由は、政治家の汚職を減らす(なくす)ためです。

1970年代から1990年代にかけて大物政治家による巨額の汚職が頻発しました。

  • 1976年:ロッキード事件
  • 1979年:ダグラス・グラマン事件
  • 1980年:KDD事件
  • 1988年:リクル-ト事件、砂利船汚職事件、明電工事件
  • 1991年:共和汚職事件
  • 1992年:東京佐川急便事件
  • 1993年:ゼネコン汚職事件 など

1994年政党交付金の法令が成立

前述のような汚職事件頻発により、1994年についに政権が自民党から社会党へと移りました(55年体制の終焉)。

こうした世論の動きを受けて、1994年に政党助成法を含む政治改革四法が成立し、政党交付金の制度が誕生しました。

政治活動に多額のお金がかかる

そもそも、政治家が汚職や不正利用をしてでもお金をかき集めるのには理由があります。それは「政治活動に多額のお金が必要だから」です。

元衆議院議員の深谷隆司氏は月間Hanada2024年4月号で以下のように記しています。

「現役国会議員には公設秘書が三人付く。しかし、広い選挙区で政治活動をするには三人ではとても足りず、最低でも四~五人の私設秘書が必要で、その手当、人件費がかかる。/選挙区には当然事務所を開き、場所によっては数カ所必要なところもある。これらの維持経費は馬鹿になりません。/後援会活動に要する費用も大きく、仮に政治用パンフレットを作りこれを発送するとなると印刷費、郵送代と大変な費用がかかります。数万枚のパンフレットを年数回出さなければ主張を徹底して伝えることができないのだから、大変なのです。」

月間Hanada2024年4月号より引用

月刊Hanada2024年4月号 [雑誌]

政党交付金をなくしても別の分配金制度ができる

政治活動はお金をかけないといけないため(次の選挙で落選するため)、結局のところ、政党交付金をなくしたところで別の分配金制度ができるだけかもしれません。

使途の開示義務がある政党交付金は、まだチェックできる余地がある「マシ」な制度といえるかもしれません。

もちろん、おかしな使い方をして構わないお金ではありません。使う側のモラルやおかしな使い方のできないシステムの構築が必要でしょう。

まとめ

政党交付金(政党助成金)とは何かを、その仕組みや誕生経緯から説明しました。

一定の要件を満たした国政政党に対して、政治活動の資金的な助けにするために、日本の人口×250円が分配されます。使い道には公開義務があり、余ったお金は返還されます。

不正利用が後を絶ちませんが、政党助成金制度誕生以前のロッキード事件など巨額な汚職を減らすという目的には貢献していると言えそうです。

今後も、より良い政治が実践されるように、政党交付金も含めて制度が改善されていくと良いですね。

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