議員秘書は、国会議員を支える重要な役割を担っています。
政策立案の補助から選挙活動の支援、事務所運営まで、多岐にわたる業務をこなし、その経験は議員秘書自身のキャリア形成にも大きく役立ちます。
本記事では、議員秘書の種類や仕事内容、年収、秘書から議員になる方法について解説し、実際に議員秘書から国会議員になった政治家を紹介します。
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大切な思い出を手元にもオンラインにも保存する【HOZON PRINT】議員秘書とは
議員秘書とは、国会議員(衆議院議員・参議院議員)を補佐し、その議員の公務や私的活動を支える職務に従事する人物を指します。
秘書は、国会や選挙区での活動のほか、政策立案の補助、事務所の管理、選挙活動のサポートなど多岐にわたる業務を担当します。
議員秘書には公設秘書と私設秘書の2種類があり、それぞれの役割や雇用形態が異なります。
公設秘書
公設秘書は、国から給与が支給される公務員に相当するポジションです。国会議員一人あたり、以下の3人の公設秘書が配置されます。
政策秘書
政策立案や議会活動における専門的な支援を行います。政策秘書資格試験に合格する必要があり、政策に関する専門知識が求められます。
第一秘書
議員事務所の管理や運営、地元での選挙活動のサポートを行います。議員のスケジュール管理や選挙区での活動が主な業務です。
第二秘書
主に事務作業や日常業務を担当します。電話対応、書類作成、来客対応などを行い、事務所運営のサポート役を果たします。
公設秘書の給与
公設秘書の給与は国費で賄われ、以下のような相場です。
これらの公設秘書の給料は国の予算で支払われます。つまり、国費(税金)によって賄われており、議員自身が直接負担するものではありません。
私設秘書
私設秘書は、議員が自らの予算で雇用する秘書です。公設秘書と異なり、雇用契約は議員本人との間で結ばれ、給与は議員やその後援会の資金から支払われます。
私設秘書の役割は議員によって異なりますが、選挙活動のサポートや地元での活動補助を担うことが多いです。
私設秘書の給与
私設秘書の給与は、議員個人の資金や後援会からの支援などによって支払われます。公設秘書と比べて給与の幅が広く、議員の資金力や秘書の能力・役割によって変動します。
スタディサプリEnglish ビジネス英語議員秘書の仕事内容
議員秘書の仕事内容は多岐にわたり、国会議員の活動を全般的に支える役割を果たしています。
政策秘書、第一秘書、第二秘書、私設秘書それぞれが異なる役割を担っています。
以下に、各秘書の仕事内容をくわしく解説します。
政策秘書の仕事内容
政策秘書は、議員の政策立案や議会活動の支援に特化した役割を果たします(衆議院・政策担当秘書の職務内容等などより)。
政策立案の補助
政策に関する情報収集や調査を行い、議員が提出する法律案や政策提案の準備をサポートします。
国内外の経済、政治、社会問題に関する分析を行い、議員に政策的な助言を提供します。
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議会の資料準備
議員が国会で質問や討論を行う際に、質問内容や関連資料の作成、演説の原稿作成なども担当します。
各種会議・委員会の準備
国会での委員会や審議会に向けて、会議資料の準備、調査資料の収集、議論の戦略を立てる支援を行います。
他議員や官僚との交渉
政策実現のために、他の議員や関係省庁の官僚と協力して交渉や折衝を行い、政策の合意形成を図ります。
政策秘書は、政策に関する高度な専門知識が求められ、議員が国会で効果的に活動できるようにする重要な役割を担っています。
第一秘書の仕事内容
第一秘書は、議員の事務所運営や選挙区活動の全般を管理し、議員の右腕として多くの責任を担います。
事務所の管理
議員の東京や選挙区にある事務所の運営を管理し、スタッフの監督や事務作業の調整を行います。予算管理や後援会の対応なども含まれます。
スケジュール管理
議員の公務や会議、イベントのスケジュールを管理し、効率よく活動できるよう調整します。
地元選挙区での活動支援
議員の地元での後援会活動や地元住民との意見交換会の運営をサポートし、議員と選挙区の有権者との関係を強化する役割を担います。
選挙支援
選挙運動や準備、支援者の調整、選挙戦略の策定をサポートします。また、地元のボランティアやスタッフとの調整も担当します。
広報活動
議員の活動を有権者やメディアに広報するために、SNSやウェブサイトの運営、プレスリリースの作成、メディア対応などを行います。
第一秘書は、議員の日々の業務を円滑に進めるための中心的な役割を果たし、特に地元での選挙区活動が重要な部分となります。
第二秘書の仕事内容
第二秘書は、議員の事務所での事務作業や雑務を担当し、日常業務の支援に従事します。
事務作業
書類の作成、データ入力、電話応対、メールの管理など、事務所内の業務をサポートします。
庶務業務
事務所の備品管理や会議の準備、来客対応などの日常的な業務を行います。
連絡調整
地元選挙区や他の秘書、関連団体との連絡を取り、調整役として働きます。
地元活動の支援
地元でのイベント準備や会議の手配、後援会対応など、幅広い業務をこなします。
第二秘書は、議員事務所の運営を支える重要な役割を担い、一般的な事務作業や庶務を通じて事務所全体の業務を円滑に進める役割を果たします。
私設秘書の仕事内容
私設秘書は、議員自身が私的に雇用する秘書で、業務内容は多岐にわたります。具体的な役割は議員ごとに異なりますが、以下のような業務があります。
議員の個人的なサポート
家族とのスケジュール調整、個人的な業務の補助など、私的な側面も含まれます。
選挙活動のサポート
公設秘書同様に、選挙活動や地元での後援会活動をサポートすることが多いです。
地元選挙区での活動
地元の有権者とのつながりを強化するための支援を行い、選挙戦略や活動の補助に従事します。
私設秘書は、議員の個人的な面でのサポートや、地元の活動における補助的な役割を果たします。
議員秘書になる方法
議員秘書になるには、いくつかの方法があります。
公設秘書になるための条件
まず、公設秘書になるには以下のような条件を満たす必要があります。
政策秘書資格試験に受かる
政策秘書は資格試験に合格する必要があります。試験は毎年実施され、法律や経済、国際関係など幅広い知識が求められます。
議員から指名をもらう
第一秘書や第二秘書は特定の資格試験は必要ありませんが、議員自身が適任だと認めた人物を選任するため、人脈や信頼関係が重要です。政治や議員事務所での経験があれば採用されやすい傾向があります。
私設秘書になるための方法
つづいて、私設秘書になる方法を紹介します。
推薦・紹介をもらう
地元後援会や選挙活動のボランティアとして働き、議員から信頼を得ることで私設秘書として雇用されることが多いです。選挙時に活動を支援し、信頼関係を築くのが一般的なルートです。
議員秘書から議員になることは多いか?
議員秘書としての経験を積んだ後、国会議員になった人物は少なくありません。議員秘書としての経験が、政治の現場での知識や人脈を築く重要なステップとなることが多いためです。
また、引退する議員から後継者として指名されることもあります。
以下に、議員秘書から国会議員になった著名な例を何名か挙げます。
菅義偉氏
元総理大臣(2020年~2021年)
菅義偉氏は、自身が議員になる前に衆議院議員の小此木彦三郎(おこのぎ ひこさぶろう)氏の秘書を務めていました。
秘書としての経験を通じて政治の現場を学び、その後、自ら立候補して議員となり、最終的に総理大臣まで上り詰めました。
また、内閣の要職である官房長官を歴代最長期間務めたことでも知られています。
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安倍晋三氏
元総理大臣(2006年~2007年、2012年~2020年)
安倍晋三氏は、父親である安倍晋太郎の秘書として政治活動をサポートしていました。父親の秘書時代に政治家としての基礎を築き、その後自ら国会議員として立候補、総理大臣を務めました。総理大臣として歴代最長の在任記録を保持しています。
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小渕優子氏
衆議院議員
小渕優子氏は、父親であり元総理大臣の小渕恵三の秘書を務めていました。父親の政治活動をサポートし、その後、自らも政治の道を歩み、経済産業大臣などを歴任しています。
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石破茂氏
衆議院議員、総理大臣
石破茂氏は、父親である石破二朗の秘書として政治のキャリアをスタートしました。父親の選挙活動や政治活動を支援し、その経験をもとに自らも衆議院議員として当選し、5度も自民党総裁選に出馬した末に総理大臣になりました。
河野太郎氏
衆議院議員、元外務大臣、防衛大臣
河野太郎氏は、父親である河野洋平の秘書として活動し、政治家としてのキャリアを築きました。
秘書時代の経験を活かして、衆議院議員に当選し、外務大臣や防衛大臣など要職を歴任しています。
まとめ
議員秘書は、国会議員の多忙な業務を支え、政策立案や選挙活動などの現場で重要な役割を果たしています。特に政策秘書は高度な専門知識が求められ、公設秘書は公務員として給与が保証されています。
議員秘書は、将来の政治家を目指す人にとっても有力なキャリアの一歩であり、安倍元総理や菅義偉元総理をはじめ多くの秘書経験者が国会議員に転身しています。
秘書としての経験は、政治の現場で貴重なスキルや人脈を築く大きな機会となります。
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