内閣の長は内閣総理大臣です。内閣総理大臣は、国家の舵取りを担う重要な役割を果たし、国の政治的な方向性を決定するリーダーです。
しかし、総理大臣の任期やそのリーダーシップには大きな違いがあり、長期政権と短命政権では政策の進め方や国民への影響が大きく異なります。
この記事では、総理大臣の基本的な役割やリーダーシップの取り方、また、長期政権と短命政権の違いを詳しく解説します。
日本の政治史を振り返りながら、政権運営のポイントに迫ります。
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内閣とは
内閣は、行政権を担う機関であり、そのリーダーである内閣総理大臣(首相)は日本の最高行政責任者です。
内閣総理大臣とは
内閣総理大臣(首相)は、行政の最高責任者として内閣を率い、国政全体の指揮を執る重要な役割を担っています。
ここでは、内閣総理大臣の役割、選出方法、不信任決議と衆議院解散、与党との関係、および衆議院と参議院との関係について詳しく説明します。
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内閣総理大臣の役割
内閣総理大臣は、内閣の長として行政機関の統括責任者であり、内政・外交全般に関与します。その主な役割は次の通りです。
政策の決定と実行
内閣の方針や政策を決定し、行政機関を通じて実行に移します。例えば、国の予算案の作成や外交政策の推進などが含まれます。
国会との関係調整
内閣総理大臣は国会での答弁を行い、法案審議を通じて議会との協力を図ります。また、内閣が提出した法案の成立に向けて議会との調整を行います。
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行政の指揮・監督
各省庁の大臣を任命・罷免する権限を持ち、行政機構全体を監督します。
外交政策の決定と実施の主導
外交政策の決定と実施を主導し、国家元首として他国との交渉に臨みます。
このとき、外務省をはじめとした各省庁の官僚や関係する政治家との調整も内閣の大きな仕事です。そのために内閣には補佐官と秘書官を置き、総理大臣に非常に近い距離感で運営を行います。
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緊急時の対応(災害など)
災害や国家の危機的状況において指導力を発揮し、迅速な対応を指示します。
台風や地震などの災害、原発事故、邦人の海外拘留などがその例です。
なお、災害発生時には総務省に対策本部が設置され、総務大臣が重要な役割を果たします。こうしたことからも、総務大臣経験者がその後内閣総理大臣に出世していくパターンが多いです。
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内閣総理大臣の選出方法
内閣総理大臣は、憲法に基づき次の方法で選出されます:
国会による指名
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の指名によって選ばれます。まず、衆議院と参議院でそれぞれ内閣総理大臣を指名する投票が行われます。
両院で異なる人物が選ばれた場合、両院協議会が開かれますが、協議がまとまらない場合は衆議院の議決が優越され、衆議院の指名した人物が総理大臣に選出されます。
通常は衆議院・参議院で異なる人物が内閣総理大臣に指名されることはありません。ただし、ねじれ国会で衆議院の第一党と参議院の第一党が異なる場合にそうしたケースが発生します。
※関連記事:ねじれ国会とは:法案成立など国会運営に及ぼす影響などメリット・デメリットや過去の実例を解説
天皇による任命
国会の指名に基づいて、天皇が内閣総理大臣を正式に任命します。この任命は形式的なもので、総理大臣の権限は議会によって決定されます。
不信任決議と衆議院解散
衆議院は内閣に対して不信任決議を行うことができます。この制度は、内閣の政策や運営に対する議会の信頼を確認する重要な手段です。
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なお、内閣・国会・裁判所は互いにパワーバランスを取るような仕組みになっており、いずれか1つの機関や1名の人物に権力が集中しないようになっています。これを三権分立と呼びます。
※関連記事:三権分立とは:国会・内閣・裁判所の三権の相互作用や国民とのかかわりを解説
不信任決議の成立時の対応
衆議院で内閣不信任決議が可決された場合、内閣総理大臣は次の2つの選択肢があります。
内閣総辞職
内閣全体が辞任し、新たな内閣総理大臣が選出されるプロセスが開始されます。
衆議院の解散
内閣総理大臣は衆議院を解散し、総選挙を実施することができます。選挙後、特別国会が召集されて新たに内閣総理大臣が指名されます。
※関連記事:国会の仕事:国会の役割(唯一の立法機関)と構成(二院制や与党・野党の役割)を解説
不信任決議は衆議院のみで行われ、参議院にはこの権限がありません。これを衆議院の優越と呼びます。
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内閣総理大臣と与党との関係
内閣総理大臣は通常、与党の党首が務めるため、与党と緊密な関係を持ちます。
与党は内閣の政策を支持し、法案の成立に向けて協力します。総理大臣は与党の支持を得て政治的安定を保ちながら、国会運営を進めることが求められます。
党内各派閥との調整
内閣総理大臣は与党内にある各派閥の意見を調整し、党内の統一を図ります。党内の支持が弱まると内閣運営が困難になるため、与党内でのリーダーシップが重要です。
そのため、各派閥の長との関係が良い人物が総理大臣になると国会運営がしやすくなります。
※関連記事:政治派閥とは:派閥のメリット・デメリットや無派閥との違いを解説し、派閥の歴史を振り返ります
与党と対立関係になる場合
一方で、与党内の派閥争いや政策に対する意見の相違によって、首相と与党内の勢力が対立する場合もあります。特に、与党内の支持を失うと首相の政権運営が不安定になります。
与党内の意見対立が深刻になると、首相は党内からの圧力にさらされ、不信任決議や辞任に追い込まれることもあります。
実例①:福田康夫内閣(2007-2008年)
福田康夫首相は、与党自民党内の支持が十分でなく、党内外からの圧力により1年で辞任しました。
特に、民主党が参議院で多数を握る「ねじれ国会」状態で、与党内の不一致や対立が政権運営に大きな影響を与えました。
そのため、当時野党の第一党だった民主党との大連立すら模索したとされています。
※関連記事:ねじれ国会を解消するための手段やその実例
実例②:菅直人内閣(2010-2011年)
菅直人首相も、与党である民主党内の対立に悩まされました。党内の主要な支持基盤を失い、政策がうまく進まなかった結果、首相としてのリーダーシップが問われ、歴代ワースト3位の支持率を記録。最終的に辞任に追い込まれました。
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内閣総理大臣と衆議院や参議院との関係
内閣総理大臣は衆議院に対して強い権限を持つ一方で、参議院との関係も重要です。
衆議院との関係
衆議院は内閣総理大臣の指名や内閣不信任決議を行うため、総理大臣にとって衆議院での多数派形成が極めて重要です。
衆議院での多数派が確保できない場合、内閣の存続が危ぶまれるため、総選挙などを通じて政治的基盤を強化することが必要になります。
参議院との関係
参議院には不信任決議権はありませんが、重要な法案や政策の審議で参議院の協力を得る必要があります。
参議院で与党が過半数を持たない場合、ねじれ国会が生じ、法案の成立が困難になることもあります。この場合、内閣総理大臣は参議院の反対勢力と交渉し、妥協を図る必要が出てきます。
長期政権と短命政権の総理大臣のリーダーシップや政策の違い
長期政権と短命政権の総理大臣のリーダーシップや政策の違いについては、いくつかの要因が影響します。それぞれの政権には独自のリーダーシップスタイルと政策があり、政権の長さに大きな影響を与えます。
以下に、その違いを具体的に説明します。
※関連記事:歴代総理大臣の在任期間ワーストランキング
リーダーシップの違い
1つ目に紹介するのは「リーダーシップの違い」です。
長期政権の総理大臣は安定感のあるリーダーシップを取る
長期政権を築いた総理大臣は、与党内での支持を強固に保ち、党内対立を巧みに調整する能力を持っていることが多いです。派閥のバランスを取り、党内の意見をまとめることで政権の安定を保つことができます。
実例:安倍内閣(2012年-2020年)
歴代最長の在任期間である安倍内閣(2012年-2020年)は、自民党内の派閥を巧みに調整し、経済政策「アベノミクス」を推進し、外交では安定した関係を築きました。
特に、無派閥の菅義偉氏を官房長官にすえ、麻生太郎氏をはじめとした各派閥の長に根回しや相談をしながら政権運営を行ったと評価されています。
短命政権の総理大臣はリーダーシップが不安定
短命政権の総理大臣は党内支持が弱かったり、党内の派閥争いが激しかったりするため、リーダーシップが安定しないことが多いです。
しばしば与党内での意見の不一致や党内抗争が原因で、早期に辞任することが多いです。
実例①:福田康夫内閣(2007年-2008年)
福田康夫内閣(2007年-2008年)は、党内対立や参議院でのねじれ国会により、安定した政策運営ができず、わずか1年で辞任しました。
長期的な改革を進める余裕がなく、短期的な政策や人気取りの政策に集中しがちです。大きな成果を残せないまま辞任することが多いです。
実例②:鳩山由紀夫内閣(2009年-2010年)
鳩山内閣(2009年-2010年)は、普天間基地問題を巡る混乱や党内の不一致により辞任しました。
2009年の衆議院選挙では鳩山氏は普天間基地移設問題について「最低でも県外移設」と約束していましたが、果たせず。国会答弁で「県外移設を模索したが、現実的な解決策を見つけることができなかった」と釈明し、支持率急落(歴代ワースト8位)。最終的に辞任に追い込まれました。
※関連記事:国会答弁の歴史的な実例
政策の違い
2点目は「政策の違い」です。
長期政権の政策は経済政策と外交政策が一貫している
長期政権では、経済政策と外交政策のが方向性が一貫している傾向があります。経済成長や雇用対策、税制改革など、長期にわたる政策を実現するための基盤が整います。
実例:安倍内閣(2012年-2020年)
安倍内閣は「アベノミクス(金融緩和、財政出動、構造改革)」を提唱し、持続的な経済成長を目指した政策が長期的に実施されました。
また外交政策にも一貫性があり、他国との安定した関係を築いていました。長期的な外交戦略を立てることができるため、国際的な信頼も得やすくなります。
例えば安倍政権は米国との同盟関係を強化し、インド太平洋戦略を推進しました。
短命政権は改革が停滞がちでポピュリズム的
短命政権では、大規模な改革や長期的な政策は進みにくく、既存の政策の延長や修正にとどまることが多いです。政治的に不安定なため、政策の実現力が低下します。
また、支持を得るために短期的に注目される政策を打ち出すことが多いですが、持続的な影響力は低いです。
実例①:鳩山由紀夫内閣(2009年-2010年)
民主党の鳩山由紀夫政権では、普天間基地移設問題や消費税の扱いなどで迷走し、成果を上げられずに終わりました。
実例②:菅直人内閣(2010年-2011年)
鳩山内閣の後に組閣した菅直人内閣は、東日本大震災対応や福島第一原発事故対応に集中したが、長期的なビジョンを示すことができませんでした。
特に福島第一原発事故対応では、対応が後手に回ったと批判され、国会答弁でも「全ての責任は私にある」と認めました。その後のエネルギー政策転換にもつながりました。
党内対立への対応の違い
3点目は「党内対立への対応の違い」です。
長期政権は党内融和を目指す
長期政権の総理は、党内のさまざまな派閥を調整し、与党内での強力な支持を築くことに成功しています。これにより、政権基盤が安定し、法案の成立や政策推進が円滑に進みます。
実例:安倍内閣(2012年-2020年)
安倍内閣は、前述のように自民党内の派閥間の調整を通じて強いリーダーシップを発揮しました。これにより、党内の対立が深刻化しないように早めに対応していました。
短命政権は対立
対立の増大:短命政権の総理は、党内や与野党の対立を収束できず、政権運営に困難を抱えることが多いです。政策の混乱や意思決定の遅れが、さらに政権の不安定さを助長します。
実例①:第一次安倍内閣(2006年-2007年)
歴代最長記録をほこる安倍内閣ですが、第一次政権時はわずか1年で終わりました。
この背景には、年金記録漏れ問題への不満や、2007年の参院選で自民党が大敗し、国会での「ねじれ」が生じたことがあります。また、安倍内閣の閣僚の不祥事が相次ぎ、支持率が低下したことも要因でした。
実例②:野田佳彦政権(2011-2012年)
民主党政権最後の内閣である野田内閣も短命でした。消費税増税法案を推進しましたが、これにより党内の対立が激化し、支持率が低下。
最終的に衆議院解散に追い込まれ、自民党に政権を明け渡す結果となりました。
与党内での関係性が政権運営の大きなポイント
実例を踏まえてこれまでお伝えしたように、与党内での関係性は長期政権か短命政権かに大きく影響します。
与党内の支持を得られれば安定した政権運営が可能となり、長期政権を築けます。逆に、党内対立や支持の低迷があれば短命政権に終わることが多いです。
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まとめ
内閣総理大臣は、内閣のトップとして政策の実施を統括し、国内外でのリーダーシップを発揮します。
長期政権では安定した政治運営により大規模な改革や継続的な政策が実現しやすい一方で、短命政権は支持率の低迷や党内対立により、政策実行力が欠如し、早期に解散や辞任に追い込まれます。
総理大臣のリーダーシップが長期政権を支え、国家の発展に寄与する一方で、短命政権が続くと政治的な停滞を招く可能性があります。国民の信頼と党内の支持が、総理大臣のリーダーシップを左右する重要な要素です。

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