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選挙でネット投票ができないのはなぜか:ネット投票のメリット・デメリットや世界の動きとの比較を紹介

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スマホで簡単に操作できるイメージ 政治活動
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現在、日本の国政選挙では「投票所」に行く方法での投票が求められています。商品の注文や配達、ホテルや新幹線の予約、役所の事務作業すらもネットでできるのに、なぜネットで投票できないのでしょうか。

これには理由があります。その理由をまとめて紹介し、海外でのネット投票の事例も紹介します。

※関連記事:選挙権18歳:18歳以上に引き下げられた理由とその影響、被選挙権の年齢引き下げに関する議論をまとめました

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日本でネット投票が実現しない理由

インターネットが普及して以降、選挙でネット投票ができるようにしようという議論が行われています。

2013年には議員立法により、インターネットを使った選挙運動が解禁されました。2024年の東京都知事選では候補者がSNSを活用した選挙運動を展開して事前予想を大きく票を上回るサプライズも起きました。

ところが、ネット投票はいまだに実現していません。

これにはいくつか理由があると言われています。

与党が選挙に負けないようにするため

1つ目の理由は、与党による「選挙対策」です。

ネット投票が解禁されると、「それまで投票していなかった層」が投票行動を起こすと考えられています。すると、その層が支持しない政党は不利になります。

若い世代の投票率は低い

以下は、年代別の投票率です。10代~30代の投票率は30~40%台で、40代以上の世代より投票率が低いです。

 10歳代(%)20歳代(%)30歳代(%)40歳代(%)50歳代(%)60歳代(%)70歳代以上(%)全体(%)
2016年 参議院選挙46.7835.6044.2452.6463.2570.0760.9854.70
2017年 衆議院選挙40.4933.8544.7553.5263.3272.0460.9453.68
2019年 参議院選挙32.2830.9638.7845.9955.4363.5856.3148.80
2021年 衆議院選挙43.2336.5047.1355.5662.9671.3861.9055.93
2022年 参議院選挙35.4233.9944.8050.7657.3365.6955.7252.05
総務省・国政選挙の年代別投票率の推移についてより

自民党が若い世代にあまり支持されていない

2024年5月時点のNHKの世論調査では、自民党の支持率は全世代をつうじて27.5%でした。

世代別にみると、18歳~39歳は16.8%と、全世代を通じて最も支持率が低いです。

ネット投票の解禁によって「自民党支持者の少ない層」が新たに投票するようになると、自民党が選挙で負ける危険性が高まります。

これがネット投票実現をはばむ原因のひとつとされています。

これに対して立憲民主党と日本維新の会は2023年、「インターネット投票の導入の推進に関する法律案」を共同提出しています(衆議院・第211回国会提出法案)。

ネット投票の潜在リスクが大きいため

2つ目の理由は技術的な問題です。ネット投票にはさまざまなリスクがあり、それを「完全に」解決する手段がない、というのが理由です。

例えば以下のようなリスクが考えられています。

  • 投票のなりすまし
  • アカウントの乗っ取り
  • 投票結果のデータ改ざん
  • システム障害

ネット投票をはじめるとすると、有権者1人ひとりに投票IDが割り当てられるとされています。そのIDを不正に取得すると、本人になりすまして特定の候補者に投票することが可能です。

例えば老人ホームに入居している高齢有権者になりすまして職員などが不正投票することも、技術的にはむずかしくないでしょう。

同様に、有権者ごとにアカウントを作成しても、そのアカウントを乗っ取れば不正投票ができます。

さらに、公正に投票されたとしても、サイバー攻撃によって投票結果を改ざんされる恐れもあります。

紙の投票用紙であれば用紙をみてもう一度集計できます。ですが、データだと改ざん前の結果(どの候補者に投票したか)を調べるのが技術的にむずかしい場合も考えられます。

また、サーバーがダウンするなどシステム障害が発生するケースも考えられます。選挙に限らず、定期的にどの企業、どの地域でも発生しています。投票中にシステム障害が発生する可能性は必ずあると言えるでしょう。

ネット投票のリスクへの対処法

では、前述のような「ネット投票の技術的リスク」を回避する方法はないのでしょうか。

いくつか提案されている方法があるので、まとめてみました。

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出口調査の結果と照らし合わせる

投票に不正操作があったかどうかの判断基準のひとつとして、出口調査の結果を採用すれば良いという考えがあります。

出口調査は選挙当日、投票を終えた有権者を対象に投票所の出口で投票先などを聞く調査です。かなり信頼性の高い調査であり、実際、出口調査の結果で開票作業「前」に当選確定が分かる場合すらあります(岡山理科大学などより)。

選挙結果と出口調査の結果が大きく異なっていれば、何らかの不正操作が行われた可能性があります。疑惑があると分かれば、「何らかの対応が必要だ」という説得力が生まれ、必要な対応を取りやすくなります。

投票のやり直しを可能にする

投票のなりすましやデータ改ざんが行われると、出口調査などの結果と大きく異なる投票結果が出る可能性があります。

そんなときに投票のやりなおしをすれば良いという意見もあります。

現在の公職選挙法では投票のやり直しができません。たとえ選挙管理委員会の案内ミスだったとしてもやり直しできないようになっており、過去にそれが原因でトラブルになった例もあります(朝日新聞など)。

法律を改正して一定の場合に投票のやり直しを認めれば、ネット投票のリスクにある程度対処できます。

システム障害に対応できるシステムをつくる

システム障害のリスクに対しては、事前に対応できるような仕組みやシステムを構築しておけば、かなりの程度予防できるはずです。

そもそもシステム障害の原因は「ハードウエア障害」「ソフトウエア障害」「人的ミス」の3つと言われています。日々のメンテナンス、バグ対応、人的ミスを防ぐ二重三重のチェック機能などで大部分は予防できます。

とはいえ、KDDIやみずほ銀行のような大障害が起こったケースもあります。これについては、「リスクをゼロにする」のはほぼ不可能かもしれません。

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海外でのネット投票の状況

ネット投票が技術的に可能になって以降も、国政選挙でネット投票を実施している国は海外でもほとんどありません。

エストニアのネット投票例

実は、ネット投票を実現させているのは、OECDに加盟している38か国のなかではエストニアだけです。

エストニアでは2007年の国政選挙からネット投票がはじまっています。すると、それ以前は議席率が2割に満たない第三党に過ぎなかったエストニア改革党(Reformerakond)が議席数を2倍近くに伸ばして第一党に躍進。以降も30-40%近い議席率を維持して第一党として首相を輩出しています。

このように、ネット投票をはじめるとそれまでの選挙結果がガラリと変わる可能性を秘めているのです。

ネット投票のメリット

日本含めて海外でもほとんど全面採用に至っていないネット投票。それでも解禁の声がなくならないのは大きなメリットがいくつもあるからです。

若い世代も投票しやすくなる

そのうちのひとつは「若い世代の政治参加」です。

日本では10代~30代の投票率が30~40%台と、ほかの先進国と比べて極めて低いです。若者など特定の世代の政治への意識がうすれていくと、必要な社会保障制度改革や弱者救済、経済力アップなどさまざまな面で進歩が遅れたり、偏ったりしていきます。

「24時間投票可能」「自宅で投票可能」「スマホで投票可能」のような便利なシステムを導入すれば、現在投票していない人たちにも投票をうながし、政治への意識を高めていける可能性があります。

実際、若い世代の政治参加をうながすために選挙権が与えられる年齢も海外同様に18歳以上に引き上げられています。

※関連記事:選挙権18歳:18歳以上に引き下げられた理由とその影響、被選挙権の年齢引き下げに関する議論をまとめました

開票作業が瞬時に終わる

ネット投票がはじまると、開票作業が瞬時に終わるかもしれません。

現在は投票箱をあけて1枚1枚開票して集計しているため、開票作業に何時間もかかっています。ですが、ネット投票であれば集計作業は一瞬で終わります。

また、2017年の衆議院選挙では台風の影響で投票所に投票箱が届かず、開票作業が大幅に遅れる事態も発生しました。この経験から、ネット投票が政権内でも議論されたこともありました(NHK・政治マガジンより)。

投開票の費用を削減できる

ネット投票が一般的になると、投開票にかかわる費用を大幅に削減できます。

現在、国政選挙の投開票には556億円かかっているそうです(鳥取県「選挙に係る経費は?」より)。この費用には投票所にかかる経費、開票所にかかる経費などがあります。

ネット投票が広まればこうした費用の多くを削減でき、社会保障などに回すことも可能になるでしょう。

まとめ

日本の国政選挙でネット投票がはじまらない理由を紹介しました。

サイバー攻撃や投票のなりすまし、システム障害などのネット特有のリスクのほかに、エストニアで見られたように「選挙結果が大きく変わってしまう」というリスクも存在します。

ただ、これらの多くはネット社会では当たり前のことであり、ある程度までは対処法も実施されています。

ネット投票のメリットやリスクについて議論が進んでいくと良いですね。

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