PRを含みます

議員立法とは:議員立法の手続きや特徴、成立する議員立法が少ない理由を解説

スポンサーリンク
国会議事堂 政治活動
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

政治家が国会に提出する法案を「議員立法」と呼びます。議員立法は国民生活に役立つと言われていますが、内閣が作成する内閣立法にくらべて成立数が少ないです。

そこで、議員立法の提出要件や審議手続きの方法を解説し、議員立法の成立数が少ない理由を紹介します。

※関連記事:議員年金の必要性と現実:なぜ必要だったのか、そして廃止後の影響を解説

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

議員立法とは

議員立法とは、「議員によって法律案が発議され、成立した法律」と呼ばれます。つまり、議員が作成して国会に提出し、成立に至った法律を指します。また、成立に至っていない「法案」の段階でも議員立法と呼びます(衆議院法制局より)。

内閣立法との違い

議員立法と名称の似ている「内閣立法」もあります。

内閣立法は内閣での閣議を経て大臣が提出する法案です。政府立法とも呼ばれます。

議員立法のプロセス

議員立法は以下のプロセスを経ています。

法案提出の要件

議員が法案を提出するには、以下の要件を満たすことが国会法で定められています。

  • 衆議院:20人以上の賛成者が必要(予算を伴う法律案については50人以上)
  • 参議院:10人以上の賛成者が必要(予算を伴う法律案については20人以上)

誰でも手軽に提出できるわけではなく、賛同者を多数集める必要があります(衆議院より)。

委員会で審議・採決される

提出された法案は、所管する委員会に回されます。そこで議案提出議員に議案提出の目的(解決したいニーズはなにか)を聞き取り、つづいて各委員や招致された参考人による質疑応答を経ます。

質疑応答の後、賛成・反対の採決が行われます。賛成多数であれば本会議に回されます。

衆議院の本会議で採決

委員会で賛成された法案は、国会の本会議でさらに賛成・反対の採決がなされます。

ここで賛成多数になると、さらに参議院に回されます。

参議院の本会議で採決

衆議院で賛成された法案は、国会の本会議でさらに賛成・反対の採決がなされます。

ここで賛成多数になると成立です。

参議院で否決されると衆議院に戻される

参議院で否決されると終わりではなく、衆議院に一度戻されます。そして衆議院で3分の2以上の賛成を得られると成立します。

議員立法の現状

国会は「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」とされています。その国会の所属議員から提出される議員立法は、現状どれくらい機能しているでしょうか。

内閣立法にくらべて成立した法案がすくない

成立した議員立法は内閣立法にくらべて非常に少ないです。過去の提出件数、成立件数は以下のとおりです。

国会議員立法内閣立法
提出件数(件)成立件数(件)提出件数(件)成立件数(件)
第183回
(2013年1月28日~6月26日)
75638110
第184回
(2013年8月2日~8月7日)
0000
第185回
(2013年10月15日~12月8日)
23204510
第186回
(2014年1月24日~6月22日)
81797521
第187回
(2014年9月29日~11月21日)
3121288
第188回
(2014年12月24日~12月26日)
0040
第189回
(2015年1月26日~9月27日)
75667212
第190回
(2016年1月 4日~6月 1日)
56507218
第191回
(2016年8月 1日~8月 3日)
0000
第192回
(2016年9月26日~12月17日)
191812613
第193回
(2017年1月20日~6月18日)
666313610
第194回
(2017年9月28日~9月28日)
0000
第195回
(2017年11月 1日~12月 9日)
98282
第196回
(2018年1月22日~7月22日)
65607120
第197回
(2018年10月24日~12月10日)
1313889
第198回
(2019年1月28日~6月26日)
57547014
第199回
(2019年8月 1日~8月 5日)
0000
第200回
(2019年10月 4日~12月 9日)
1514268
第201回
(2020年1月20日~6月17日)
5955578
第202回
(2020年9月16日~9月18日)
0000
第203回
(2020年10月26日~12月 5日)
77325
第204回
(2021年1月18日~6月16日)
63618221
第205回
(2021年10月 4日~10月14日)
0030
第206回
(2021年10月 4日~10月14日)
0010
第207回
(2021年12月 6日~12月21日)
22142
第208回 (2022年1月17日~6月15日)61619617
第209回
(2022年8月 3日~8月 5日)
0000
第210回
(2022年10月 3日~12月10日)
2221256
第211回
(2023年1月23日~6月21日)
60586713
第212回
(2023年10月20日~12月13日)
1212283
合計8718061327230
成立率92.5%17.3%
内閣法制局「過去の法律案の提出・成立件数一覧」より

提出された議員立法は11年間で1327件ありますが、成立したのは230件に過ぎません。同時期に成立した内閣立法が806件なので、4分の1ほどです。

議員立法にお金がかかる

議員立法は、法案を1つ作成するのに相当な費用と手間がかかります。

※関連記事:政治家の給料はいくらなのか

国民からニーズを聞き取り、法案の目的を定め、法律上の専門知識を駆使して法案を作成し、法案についての答弁を提案議員自らが担当しないといけません。

ニーズ把握のためには議員個人の広報活動を広く行い、多くの人とコミュニケーションを取る必要があります。トラブルが発生している事案なら、関係各位から綿密に聞き取りを行う必要があります。

さらに、法律上の知識をすべての議員がハイレベルに有しているわけではありません。法制局の助けを借りて、時間をかけて法案を作成しないといけません。

そうしてようやく法案を提出しても、委員会などでの答弁は提案した議員が担当します。専門的な内容になると分からないことも当然あります。そこで、政策担当秘書を雇う必要も出てきます。

なお、立法をしやすくするためにも年間780万円の立法費が支給されており、使途公表の義務も納税の義務も免除されています。

※関連記事:政治家の税金事情:納税義務はない?源泉徴収されてる?政治家が税金を優遇されている理由を解説

1件の法案を作成・提出するのにも、手間と費用をかなりかけないといけません。

働くあなたに簡単レシピでバランスごはんをお届け♪食材宅配のヨシケイ

議員立法が成立しない理由

成立した割合は、内閣立法が92.5%なのに対して議員立法は17.3%、5分の1未満です。なぜ議員立法はなかなか成立しないのでしょうか。

野党の法案が後回しにされる

まず、審議時間の問題があります。委員会に回された議員立法のなかでも野党議員から提出された法案は後回しにされてしまい、審議時間が足りずに本会議に回されないことがたびたびあります。

例えば2018年に野党から提出された原発ゼロ基本法案は、結局3年間審議されることもなく廃案となっています(参議院より)。

官僚の協力がないと実務性・専門性が低い

さらに、法案を作成するのに官僚の協力がないと質が下がってしまいます。法案作成の目的がいくら素晴らしくても、法律として施行するには実務性が求められます。

内閣立法であれば官僚が法案作成をしてくれますが、議員立法だとそうはいきません。

結果的に、「この法案のままでは施行するわけにいかない」と委員会で判断されてしまいます。

成立しやすい議員立法の条件

議員立法は内閣立法にくらべて成立のハードルが高くなります。そのなかでも、成立している議員立法が多数存在するのも事実です。

では、成立しやすい議員立法にはどのような条件があるでしょうか。

与野党で意見がまとまりやすい法案

まず、与野党で意見が分かれない法案が成立しやすいです。与野党で利害関係が少ないもののほうが成立に向けて一致団結します。

社会共通の倫理観・道徳観に基づいている法案

酒気帯び運転の禁止(1960年道路交通法改正)など、社会で浸透している倫理観や道徳観に基づいた法案も成立しやすいです。

内閣が立法化に向けて積極的に動きづらい法案

社会的に立法化の要請が強いものでも、内閣立法しづらいものは議員立法で成立しやすいです。

例えば1978年に起きた成田新法事件(成田空港に過激派が乱入して施設を破壊した事件)では、成田空港の安全確保のために運輸大臣に強い権限を与える必要が認識されました。

ところが、政府が立法化すると国民に不安感を与える可能性があることから議員立法で法案提出・成立しています(新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法)。

議員立法のメリット

前述のように、議員立法の提出・成立にはいくつものハードルがあります。

それでも議員立法が実施されるのは、国会議員と国民の双方にメリットがあるからです。

国民側のメリット

内閣立法が政府主導の「全体的な法案」に偏るのに対して、議員立法は「国民生活に沿う法案」が多いとされています。つまり、議員立法は国民生活の「かゆいところ」に手が届く立法なのです。

仕事や日常生活の不満点や問題点を解決できる議員立法が増えると、国民にとってもメリットが大きくなります。

議員側のメリット

議員側にもメリットがあります。

議員の大きな心配事のひとつは「次の選挙で当選できるかどうか」です。選挙自体に多額の費用がかかるうえ、落選すると収入が途絶えます。

※関連記事:政治家になるにはどうすればいいか【国会議員】:資格はいる?年齢制限は?お金はどれくらいかかる?

ですが、「(成立してもしなくても)法案を提出した」という実績があれば、有権者にとても大きな個人の実績アピールができます。

まとめ

議員立法とは国会議員が提出した法案を指します。今回の記事ではその手続きの仕方や提出要件を説明しました。

議員立法は内閣立法(政府立法)にくらべて成立する割合が低く、提出された法案の8割以上は廃案になっています。

ただ、内閣立法よりも国民の生活によりそった内容と言われており、議員立法が増えるほうが議員・国民両方にとってメリットがあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました